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闘魂 サバイバル生活者のブログ

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カネの本質と時間泥棒

カネの本質と時間泥棒


安部芳裕「金融のしくみは全部ロスチャイルドが作った」(徳間書店5次元文庫)読了。安部氏は、もともと地域通貨が専門。したがって、金融・食糧・エネルギーの地産地消・地方分権を共生のためのシステムとして重視する。しかし、競争セクターを否定するわけでもなく、棲み分けを提唱する。しかしながらベースにあるのは、本来労働の対価として取引され、分業による商品の媒介にすぎないカネが自己目的化して、商品としてマネーゲームの対象となる現状に対する危機感だろう。福祉や教育、介護や医療といった本来マネゲームと相容れない共生セクターが壊滅状態にある現状に異議を申し立てる。そして、その前提として、ありったけの力を振り絞って、世界を覆うエスタブリッシュメントの横暴を白日の元にさらす。しかしねえ、この標題はいくら出版社の意向とはいえ、なんとかならんだろうかね。引用されていたマイケル・ハドソンの主張も非常に捨てがたいのだが、コンパクトでインパクトのある箇所を紹介しておく。詳細は、是非買って読んでみてください。値段も648円(税別)なのでお得だと思います。ちなみに、ネット上で展開されているのと同様な欧米のエスタブリッシュメントに対する否定的な感情に突き動かされた暴露話も痛快だ。陰謀論のレッテルを貼って封印するのも限界に来たということなんだろう。ネット上であたりまえに流通してる話なんだからリアルに出版されても個人的には違和感はない。だが、この本の値打ちを真に高めているのは、最終章の「未来への提案―偽りの経済システムをこえて自立型経済の実現へ」だと思う。自立自尊の精神に乾杯というところだ。

(引用はじめ)

…あるところに、自給自足していて、足りないものは物々交換で補っている100人ほどの小さな村がありました。そこへ、どこからともなく見知らぬ男が現れます。男は村中をブラブラしながら、しばらく村人たちの生活を観察していました。素朴で疑うことを知らない村人たちは、不審な男へも笑顔で挨拶し、決して豊かとは言えない生活にもかかわらず、家に招いて食事を御馳走したり、寝場所を提供してあげたりしました。何日か過ぎて、男は村人を集めてこう話し出しました。
「皆さんはなんて原始的な生活をしているのでしょう。私が良いモノを教えてあげましょう」
そう言って、あるモノを皆に配り始めました。
「これはお金というものです。これを使えば交換がスムーズにおこなえます」
さらに男は、野菜作りが得意な人は八百屋を、狩りが得意な人は肉屋を、釣りが得意な人は魚屋を、料理が得意な人はレストランを、お菓子作りが好きな人にはケーキ屋を、花が好きな人には花屋を、手先が器用な人には大工を、きれい好きな人には掃除屋をと、各人がお店を開くことを勧めました。

それまでは自分の生活に必要なモノを各人がバラバラに作ったり調達したりしていたのですが、男が置いていったお金を使って交換をすることにより、それぞれが自分の得意なことや好きなことを活かして生活ができるようになりました。また、作業を分担することにより、村人同士のつながりも密接になり、静かだった村に活気が出てきました。

1年が過ぎて、再び男が現れ、村人を集めてこう言いました。
「どうです?お金があると便利でしょ?申し遅れましたが、実は私、銀行家です。この前、皆さんに10万円ずつお貸ししました。来年、また来ますので、それまでに利子をつけて11万円を返してください。もし返していただけない場合は、お店の権利をいただくことになります」

お金のある生活にすっかり慣れてしまった村人たちは、昔のような自給自足の生活に戻る気はありません。お金を貸してくれた銀行家に謝礼を支払うのは当然と、利子をつけて返済することを了承しました。

再び日常生活に戻り、いつもどおり商売に励む日々が続きました。しかし、なんとなく手元のお金が気になります。すでに11万円持っている人は、お金を減らさないようできるだけ使わないことにしました。また、11万円持っていない人は、足りない分を何とか稼ごうと、もっと儲かる方法はないかとアイデアを捻る人が出てきました。返済日が近づくにつれ、11万円持っていない人は焦り始めます。
「どうしよう?このままだとお店を没収されてしまう…」
こうして仕事の目的が、これまでのように人々が必要とするものを提供することではなく、お金を稼ぐことに変わっていきました。そして、相手が必要としているかどうかなんて関係なく、とにかく売ってお金を儲けるおとを目指すようになります。なんとなく村人同士の関係もギクシャクしてきました。

1年が過ぎ、銀行家は再び村へ戻って来ました。
「さぁ、皆さん、約束どおり、利子を付けてお金を返してください」

10万円を100人に貸したので、村にあるお金は1000万円です。しかし、銀行家へ返すお金の総額は1100万円。当然、返済できない人が出てきます。

結局、村人の3分の2が返済できませんでした。村人の中に「勝ち組」と「負け組」が誕生します。

銀行家は「負け組」の人たちに向かってこう言います。
「またお金を貸してあげてもいいですが、皆さんはどうも商売が上手でないようです。リスクが高いので、今度は利子を20%にして12万円を返してもらいます。ただし、今度こそ返していただけない場合は、お店の権利をもらいますよ」

銀行家は返済の誓約を得て、再び村人にお金を貸し付けて行きました。
「では、また1年後に」


…このマネー回路の中に利子分のお金はありません。元本だけです。利子を付けて返すには、他のマネー回路から、利子分のお金を持ってこないといけません。つまり、利子とは単なる数字であって、実際には存在しないお金…地域通貨とは…

(引用終わり)

地域通貨には利息がないんですよね。そして、交換媒体=メディアとしての機能に特化している。利息がないばかりではなく、利潤を上げて、株主に配当する必要がない、農業・中小企業その他、地域に根ざした生活者たる生産者そして行政が受け入れるのが基本のようだし、いわば生活貨幣とでもいうべき労働の対価だ。経済がズタズタになって貨幣の流れがストップしたときに威力を発揮する。地域通貨のやりとりを通じて、コミュニティすなわち地方が活性化する。しかし、これは危険思想だから、中央政府はしばらくは静観し、取引量が大きくなり始めると介入しはじめる。


2008年9月21日 根賀源三


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